
マイホームの購入は、人生で最も大きな買い物の一つです。そして、その成否を大きく左右するのが「住宅ローン」の選択。特に、金利タイプの「変動金利」と「固定金利」のどちらを選ぶべきかは、多くの人が頭を悩ませる永遠のテーマと言えるでしょう。
「変動金利は金利が低いけど、将来上がるのが怖い…」
「固定金利は安心だけど、毎月の返済額が高い…」
この記事では、そんな悩みを抱えるあなたのために、変動金利と固定金利の基本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、そして具体的なシミュレーションまで、専門的なデータを基に徹底的に比較・解説します。2025年12月現在の最新金利情報をもとに、「5000万円を35年ローン」で借り入れた場合、どれほどの差が生まれるのか、そして将来どのタイミングで損得が逆転するのか、具体的な数字で明らかにしていきます。
但し、先に言っておくと、正解はありません。重要なのは、それぞれのメリット、デメリットを把握したうえで、どちらが自身に合うのかという点を焦点を当てていただければと思います。
どんなものにもリスクは存在し、そのリスクを適切にコントロールすることより、皆様のより良い生活に繋がることを願っています。
目次(クリックするとジャンプ)
そもそも変動金利と固定金利って何が違うの?
まずは、基本となる変動金利と固定金利、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
変動金利型とは?
変動金利型は、その名の通り、市場の金利動向に合わせて定期的に適用金利が見直されるタイプの住宅ローンです。一般的に、半年に一度金利が見直され、5年に一度返済額が再計算されます。金利は「短期プライムレート」という、銀行が優良企業に短期で貸し出す際の金利を基準に決定されます。
ポイント
- 金利が低いときは返済額を抑えられるが、金利が上昇すると返済額も増える可能性がある。
- 金利上昇による急激な返済額の増加を抑えるため、「5年ルール」(返済額は5年間変わらない)や「125%ルール」(返済額が増える場合でも、直前の1.25倍までしか上がらない)といったセーフティネットが設けられています。
固定金利型とは?
固定金利型は、借入時の金利が一定期間、あるいは完済までずっと変わらないタイプの住宅ローンです。金利は「長期金利」の指標となる「新発10年物国債」の利回りを基準に決定されます。固定金利には、主に2つの種類があります。
- 全期間固定金利型: 借入時から完済まで、金利が一切変わりません。住宅金融支援機構が提供する「フラット35」が代表的です。
- 固定金利期間選択型: 借入当初の2年、5年、10年など、選択した期間だけ金利が固定されます。固定期間が終了すると、その時点の金利で再度固定金利を選び直すか、変動金利に切り替えるかを選択します。
ポイント
- 返済額が確定しているため、将来のライフプランが立てやすい。
- 市場金利がどれだけ上昇しても影響を受けない安心感がある。

変動金利と固定金利のメリット・デメリット
それぞれの特徴を理解した上で、メリットとデメリットを比較してみましょう。
| 金利タイプ | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 変動金利 | ・借入時の金利が低い ・金利が低いままだと総返済額が少なくなる ・元本の減りが早い |
・金利上昇のリスクがある ・将来の返済額が不確定 ・ライフプランが立てにくい |
| 固定金利 | ・返済額が確定しているため、計画が立てやすい ・金利上昇のリスクがない ・精神的な安心感が得られる |
・変動金利より金利が高い ・金利が下がっても恩恵を受けられない ・総返済額が多くなる傾向がある |
どちらを選ぶべき?
どちらの金利タイプが向いているかは、個人の経済状況やリスク許容度によって異なります。
変動金利が向いている人
- 金利の動向を定期的にチェックできる人
- 金利が上昇しても対応できる経済的余裕がある人(共働き、貯蓄が多いなど)
- 返済期間が短い、または繰り上げ返済を積極的に考えている人
固定金利が向いている人
- 将来の教育費など、支出の計画をしっかり立てたい人
- 金利の変動に一喜一憂したくない、安定志向の人
- 毎月の返済額を確定させて、家計管理をシンプルにしたい人
2025年12月現在、住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローン利用者のうち約79%が変動金利型を選択しており、依然として変動金利が主流となっています。しかし、2024年からの日銀による金融政策の変更を受け、固定金利への関心も高まりつつあります。
【徹底比較】5000万円を35年ローンで借りたら、どれだけ違う?
では、実際に5000万円を35年ローンで借り入れた場合、変動金利と固定金利でどれくらいの差が出るのか、具体的な数字で見ていきましょう。金利は2025年12月時点の代表的な数値を使用します。
- 変動金利: 年0.6%
- 35年固定金利(フラット35): 年1.97%
| 項目 | 変動金利(0.6%) | 35年固定金利(1.97%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 月々の返済額 | 132,014円 | 164,863円 | 32,848円 |
| 総返済額 | 55,446,068円 | 69,242,300円 | 13,796,232円 |
| 総利息額 | 5,446,068円 | 19,242,300円 | 13,796,232円 |
※金利が35年間変わらないと仮定した場合の計算です。
このシミュレーション結果から分かるように、もし変動金利が35年間ずっと0.6%のまま変わらなければ、固定金利に比べて総返済額で約1,380万円も得をすることになります。月々の返済額も約3.3万円安く、家計への負担も大きく異なります。
この数字だけを見ると、「変動金利一択!」と思えるかもしれません。しかし、これはあくまで「金利が変わらなかった場合」の皮算用です。次に、この損得が逆転するシナリオについて考えてみましょう。

損得の逆転はいつ起こる?変動金利の上昇リスクを検証
変動金利を選ぶ上で最も重要なのが、「どのくらい金利が上昇したら、固定金利より損になるのか?」という損益分岐点を把握しておくことです。
逆転ポイントはずばり「1.97%」
先ほどのシミュレーションで、35年固定金利の総返済額は約6,924万円でした。変動金利で借りた場合の総返済額がこれと同じになる金利を計算すると、年1.97%という結果になります。
つまり、35年間の平均金利が1.97%を超えると、最初から固定金利を選んでいた方が得だったということになるのです。
現在の変動金利が0.6%ですから、そこから約1.37%以上金利が上昇すると、損益分岐点に達します。
金利上昇の現実的なシナリオ
では、実際に金利が1.37%も上昇する可能性はあるのでしょうか?
2024年7月に日銀がゼロ金利政策を解除し、2025年にも追加の利上げが行われるなど、日本の金利は歴史的な低金利時代を終え、上昇局面に転換したと見られています。
しかし、多くの専門家は、急激な金利上昇は経済に大きな打撃を与えるため、上昇は緩やかなペースで進むと予測しています。例えば、以下のような段階的な上昇シナリオが考えられます。
- 当初10年間: 0.6%で推移
- 次の10年間: 1.0%に上昇
- 最後の15年間: 1.5%に上昇
このようなシナリオの場合、35年間の平均金利は1.97%を下回るため、依然として変動金利の方が有利となります。
ただし、これはあくまで一つの予測に過ぎません。将来の経済情勢によっては、予想を上回るペースで金利が上昇するリスクもゼロではないことを理解しておく必要があります。
まとめ:あなたに最適な住宅ローン選びとは?
変動金利と固定金利、どちらが得かという問いに対する唯一絶対の答えはありません。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身のライフプランや経済状況、そしてリスクに対する考え方と照らし合わせて、総合的に判断することが重要です。
判断のポイント
現在の低金利の恩恵を最大限に受けたいなら「変動金利」
- ただし、金利上昇に備えた貯蓄や、繰り上げ返済の計画は必須です。
- 金利が1.37%以上上昇するリスクを許容できるかが鍵となります。
将来の安心と計画性を最優先するなら「固定金利」
- 変動金利に比べて返済額は高くなりますが、金利上昇の不安から解放されます。
- 教育費などで将来の支出が増えるご家庭には、有力な選択肢となります。
今回のシミュレーションが、あなたの住宅ローン選びの一助となれば幸いです。最終的な決断を下す前には、必ず金融機関の担当者と相談し、複数のプランを比較検討することをお勧めします。
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