
国会議員は、国政を担う国民の代表者であり、その活動に対する報酬は国民の税金から賄われています。そのため、彼らに支払われる報酬や手当の制度、そしてその使途には、常に国民の高い関心が集まっています。
ここでは、国会議員が受け取る報酬の全体像について、法律上の名称や制度を詳しく解説します。
1. 基本報酬:「歳費(さいひ)」とは
一般の会社員が受け取る「給与」に相当する、議員としての月々の基本報酬は、法律上「歳費(さいひ)」と呼ばれます。
1-1. 法律上の根拠と金額
歳費は、日本国憲法第49条の「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」という規定に基づき、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(歳費法)」によって具体的に定められています。
- 月額の歳費: 衆議院議員・参議院議員ともに同額が支給されます。
- 2025年現在、議員の歳費月額は129万4,000円です。(ただし、議長・副議長には異なる額が定められています。)なお、この記事を書いている時においては、5万円UPするという調整で協議されているようです。
- 金額の決定: 歳費の額は、「国会法」第35条で、「一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く)より少なくない歳費を受ける」と定められています。これは、議員の職務の重要性に鑑み、行政部門の最高額の給与を下回らない水準とすることが意図されています。
- 課税: 歳費は、一般の給与と同じく課税対象です。所得税や住民税などが課税されます。
1-2. 歳費の支給期間
歳費は、議員としての任期が開始する日(当選した日)から受け取ることができ、任期満了、辞職、死亡などの場合はその日までの分が支給されます。月の途中で任期が始まった場合や終わった場合は、日割りで計算されます。
2. 特別報酬:「期末手当(きまつてあて)」
会社員の「ボーナス」や「賞与」に相当するものが、国会議員の場合は「期末手当(きまつてあて)」です。これも国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律に基づき支給されます。
2-1. 支給の時期と算定
- 支給時期: 一般的に、年に2回(6月と12月)に分けて支給されます。
- 算定: 支給額は、歳費月額に、在職期間や支給月数を乗じて算定されます。期末手当の支給割合は、一般の国家公務員の期末手当の支給割合を基準として定められています。
- 課税: 期末手当も、歳費と同様に課税対象となります。
3. 活動経費:「調査研究広報滞在費」
国会議員が公的な活動を行うために必要な経費として、歳費や期末手当とは別に支給される手当があります。
3-1. 文書通信交通滞在費(文通費)から「調査研究広報滞在費」へ
この手当は、かつては「文書通信交通滞在費(略称:文通費)」と呼ばれていましたが、制度改正を経て、2022年より「調査研究広報滞在費」と名称が変更されました。
- 月額: 100万円が毎月支給されます。
- 目的: 議員の調査研究、広報、国民との交流、滞在に必要な経費に充てるものとされています。
3-2. 制度改正のポイント
旧制度の「文通費」は、「在職1日でも満額(100万円)支給される」「使途の公開義務や領収書の提出義務がない」「非課税である」といった点で、国民から強い批判を浴びてきました。
これを受けて制度が改正され、主な問題点が以下のように改善されました。
- 日割り支給: 議員の任期開始・終了に伴い、日割りで支給されるようになりました。(旧制度の最大の問題点の一つが改善)
- 名称の変更: 目的を明確化するため「調査研究広報滞在費」へ名称変更。
- 使途の透明性: 議員の「使途報告書の提出」と「インターネットでの公開」が義務付けられました。これにより、税金の使われ方に対する透明性が高まりました。
しかしながら、引き続き非課税であることや、領収書の添付が必要な支出が限定的である点など、さらなる透明化を求める声は根強く残っています。
4. 組織活動費:「立法事務費」
議員個人に支給される歳費や手当とは別に、国会内での会派(政党や議員グループ)の活動のために交付される経費があります。これが「立法事務費」です。
4-1. 目的と交付対象
- 目的: 国会議員の立法に関する調査研究の推進に資するための経費の一部として交付されます。
- 交付対象: 議員個人ではなく、各議院の会派(所属議員2人以上で構成される院内団体など)に対して交付されます。
- 交付額: 会派の所属議員数に応じ、議員一人当たり月額65万円の割合で算定された金額が、会派に毎月交付されます。
- 特徴: 交付の目的が会派の立法活動に対する助成であるため、非課税扱いとされています。
4-2. 制度上の問題点
立法事務費は、議員個人には交付されないものの、事実上の活動経費として使われています。使途については公表されていますが、「会派」への交付であるという性質上、領収書や細かな使途を議員個人が国民に説明する機会は限定的になりがちです。
5. その他の優遇措置と手当
国会議員には、上記以外にも職務遂行上の特権や費用負担の優遇措置があります。
5-1. 秘書給与と公設秘書制度
- 公設秘書: 国会議員一人あたり公設秘書を3人(政策秘書、公設第一秘書、公設第二秘書)まで公費で雇用することができます。
- 給与: 公設秘書の給与は国庫(税金)から支払われます。この給与額は、秘書の資格や経験等に応じて定められており、議員の報酬(歳費)とは別の公費負担です。
5-2. 旅費と交通費の優遇
- 往復旅費: 議員が公務のために本拠地と国会所在地(東京)を往復する際の交通費(旅費)は、実費で支給されます。
- JR特殊乗車券: JR線の無料パス(特殊乗車券)が交付され、国内のJR路線は無料で利用できます。
- 航空運賃: 公務の際の航空運賃は、原則として公費で負担されます。
まとめ:国会議員の「総報酬」と透明性
国会議員は、歳費(給与)、期末手当(ボーナス)、調査研究広報滞在費、そして会派に交付される立法事務費など、複数の形で公費を受け取っています。
| 項目 | 正式名称 | 支給対象 | 月額(議員一人あたり) | 課税の有無 |
| 基本報酬 | 歳費 | 議員個人 | 129万4,000円 | 課税 |
| 特別報酬 | 期末手当 | 議員個人 | 年2回支給(ボーナス) | 課税 |
| 活動経費 | 調査研究広報滞在費 | 議員個人 | 100万円 | 非課税 |
| 組織活動費 | 立法事務費 | 会派 | 65万円 | 非課税 |
議員の報酬制度は、議員の職務の独立性を保障し、活動を支えるために設けられていますが、その金額や使途の透明性については、常に国民からの厳しいチェックの目にさらされています。
特に、非課税で使途公開の要件が緩い手当や経費については、「税金の無駄遣いではないか」という議論が絶えず、今後のさらなる制度改革が求められています。国民の代表として、何にどれだけの税金を使っているのか、その説明責任を果たすことが、国会議員には強く求められています。
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