日本崩壊カウントダウン!?
人口構造ピラミッドの変化がもたらす、家計への影響
経済は一般的に、ヒト、モノ、カネの3つで成り立っていると言われます。そのうち、ヒトについて焦点を私たちの生活や経済の基盤となる人口構造は「平成」から「令和」にかけてどのように変化していったのでしょうか。
皆様においても、ニュース等の日々の報道において高齢化が進んでいること、又は老人が増える一方で出生率が下がってということは理解しているかと思います。
しかし、実際に人口構造がどれほど変化したかについて数字を持って説明できる方はそれほど多くないのではないでしょうか。
ヒトについて焦点を私たちの生活や経済の基盤となる人口構造は「平成」から「令和」にかけてどのように変化していったのでしょうか。
まずは人口構造を語るうえではずせないのが、平均寿命となります。「平成」の終わりから「令和」にかけて「人生100年時代」、という言葉を頻繁に耳にするようになりました。寿命が伸びるということは、まさに人類の進化であり、個々人にとっては望ましいことと考えられます。
しかし、「人生100年時代」という言葉が世の中に普及されていくのと同時に、老後の生活に対する不安に関するニュースをよく目にするようになりました。特に金融庁から発表された報告書においては、夫婦が95歳までそれなりに豊かに生きるためには、約2,000万円の資産が必要という報告書もあり、「老後2,000万円問題」として世間を騒がしていました。多くの方が、この金融庁から提出された報告書が取り上げられる前から、老後の生活が危ういのではという潜在的なリスクを認識されていた方は多くいらっしゃるかと思いますが、老後の必要金額まで計算されていた方はそれほど多くないのではないでしょうか。事実、金融庁が発表した「老後2,000万円問題」のきっかとなった報告書は、世間から大きなバッシングを受けました。私たちとしても正直なところ、老後を暮らしていくために、貯蓄等の将来の備えは必要だなと漠然とわかっていたものの、そのために必要な行動は取れておらず、あるいは取る余裕もない中で、このような具体的に厳しい金額を提示されると現実を突きつけられつつもどうすることもできないというのが、正直な感想ではないでしょうか。この金融庁から提出された報告書に対して財務省の麻生大臣は正式な文書として受け取らないという顛末となりました。政府が受け取ろうが受け取らないという選択をしようが、その提示された金額は現実であり、事実として我々は今後も生きていかなければならないということは変わらないため、政府には長期的な視点で年金問題について改善案を作成し、それを実行することが急務であること間違いありません。
では実際問題として、平均寿命はどのように変化しているのでしょうか。以下の【図1-2-1】をご覧ください。総務省統計局の「日本人の平均寿命」によれば、平成2年の男性平均寿命75.92歳、女性平均寿命81.9歳となっていました。そして平成29年には男性平均寿命81.09歳、女性平均寿命87.26歳と男女とともに、平均で5歳~6歳程度平均寿命が上がっていることがわかり、国民の多くにとって人生100年時代が到来するというものあながち夢物語ではないようにも見えます。
【図1-2-1】
(出典:厚生労働省「生命表」「簡易生命表」を一部加工)
しかし、世間で言われているような「人生100年時代」が全員に訪れるかというと、そうではないことがわかります。【図1-2-1】の色掛け箇所をご覧ください。色掛け箇所は総務省の統計に増減率を加えたものですが、平成2年~平成30年の前回統計との差は男性においては平均で0.72歳、女性は平均0.76歳となっています。特に平成28年~平成30年の平均寿命の平均伸び率は男性で平均0.15歳、女性で平均0.11歳とかなり鈍化している状況です。仮に3年経過ごとに0.5歳(平成28年~平成30年迄の男性に係る平均寿命伸び率合計)伸びると仮定した場合においても、男性の平均寿命が100歳超えるのは、約113年後、女性でも約76年後となるものと考えられます。もちろん、上記はあくまでも平均寿命なので、既に100歳を超えている方も多くいらっしゃいます。また、仮定はあくまでも同じ条件で平均寿命が伸びると想定したものであり、将来における著しい医療技術の進歩は加味しておらず、平均寿命が急激に伸びることは否定できません。また現実に、100歳を超えている方は全体の10%に近づいているということも事実であり、平成当初では珍しかった100歳超えも、令和の時代は珍しいことではなくなっているのは事実です。ともあれ、平均寿命が伸びていることは事実であり、また、平成の間でも男性6.5歳、女性6.8歳平均寿命が伸びており、「令和」においてさらに平均寿命が伸びることは容易に想定されます。平均寿命が伸びれば、それだけ長く生活しなければならず、「老後2,000万円問題」といわれる問題は、年金支給額によりますが、2,000万円では済まない可能性もあるという点については留意が必要となります。
それでは人口構造の変化を見ていきたいと思います。【図1-2-2】をご覧ください。【図1-2-2】は平成2年(1990年)の人口構造を表したのものとなります。
【図1-2-2】
(出典:国立社会保障・人口問題研究所)
平成2年(1990年)当時においては、団塊世代において人口が突出しているものの、65歳以上の人口に対して、それ下の世代が多くを占めている状況にあり、ある程度のピラミッドの形を維持しています。また、全人口に対する15歳~65歳の生産年齢人口がもっとも大きな割合は占めています。このように少数の高齢者を多数の生産年齢人口でカバーするという状況を維持することができれば、年金の財源となる国民年金や厚生年金収入を確保することができ年金制度を条件の変更なく維持することができ、上述のような年金問題というのも発生しなかったのではないでしょうか。事実、平成2年(1990年)において現在の年金財源に対して、支払額を決定するというマクロ経済スライド制度は採用されていませんでした。
続いて、【図1-2-3】をご覧ください。
【図1-2-3】
(出典:国立社会保障・人口問題研究所)
【図1-2-3】は令和2年(2020年)における人口構造を表したものとなります。平成2年(1990年)と比較すると明らかですが、ピラミッドは大きく崩れています。特に65歳から70歳が突出しており、この世代をそれよりも下の世代が支えなければならないという構造になっています。また、71歳より上の世代についても絶対的な人口が増えている状況にあります。にもかからず、45歳前後の人口をピークにそれ以下の人口は減少の一途を辿っている状況にあります。これでは、下の世代の年金に対する負担は大きくなる一方となります。
このように我々の「平成」から「令和」にかけて今後生きていかなければならない令和という時代は、世界で一番の超々高齢化社会になることは間違いなさそうです。
それでは、高齢化社会平成から令和へ近づくにつれて高齢者と家計の基礎となる世帯という視点で見た場合、どのように変化していったのでしょうか。国連の世界保健機関(WHO)の定義では、高齢者は65歳以上の人とされていることから、65歳以上の世帯数を対象に推移を見ていきたいと思います。【図1-2-4】をご覧ください。【図1-2-4】は、厚生労働省が発表した高齢者世帯の推移となります。
【図1-2-4】
平成元年(1989年)における高齢世帯割合は全世帯に対して8%に満たないほどだったのが、平成28年(2016年)における高齢世帯割合は全世帯に対して26.6%と大きく増加しています。これは、平成初期において生産年齢の大多数を占めていた、団塊世代が高齢者となったことが大きな要因かと想定されます。仮に高齢世帯26.6%を残りの世帯で支えると仮定した場合、高齢世帯1世帯を高齢世帯以外の2.75世帯が支えなければならない計算となります。高齢世帯を仮に2人の夫婦と仮定すれば、1世帯あたり、約0.7人の生活費を支えなければならないという計算になります。もちろん、この負担額がそのまま、高齢世帯以外の生活に反映されるわけではありませんが、単純計算を行うと我が国の現状は、かなり厳しい環境化にいることがわかります。さらには、令和以降も平均寿命が伸び、かつ生産年齢が減少していくことを考慮すると、この負担額はさらに増加していくことは容易に想像できるかと思います。
【図1-2-5】をご覧ください。【図1-2-5】は、消費者態度指数の推移となります。消費者態度指数とは、消費者の景気の動きに対する意識を示す指標。内閣府が消費動向調査の一部として今後半年間の「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」について調査して数値化し、毎月発表する。50以上なら良くなるとされるといった指標となります(goo辞書より)。
消費者態度指数は、新聞等においては、消費者マインドとも書かれることが多く、消費者が将来に向けての見通しを数値化したものと言ってもよいかと思います。
【図1-2-5】
(出典:内閣府)
消費者態度指数の傾向としては、若い世代と高齢世帯を比較すると若い世代のほうが、高い数値を表す傾向にあります。しかし、令和2年1月現在においても、消費に対するマインドは、どの世代においても良くなるとする50を大きく下回っている状況であり、特に、60歳以上の世代においては、29歳以下世代と比べても、10近く下回る状況にあり、将来に対する不安を各年代が映し出す結果となっていることが見てとれます。
高齢者の増加に伴い、先行きがさらに不安になることが予想され、消費者態度指数(消費マインド)は日本景気が大きく上向き、さらにはその景気に上向きによる恩恵を我々国民が実際に感じることができなければ、さらに悪化していくことが予想されます。
ましてや、コロナの影響により経済活動は一時、崩壊状態に陥りかけました。コロナの影響は徐々に我々の生活を脅かしており、コロナは精神的な恐怖だけでなく実際の生活にも影響してしまうという恐ろしいものとなっています。事実、ANAは2020年の冬のボーナスをゼロしており、我々の家計に直撃するような問題まで発展しています。このような家計の状況で、上記の消費者態度指数が上向くとは到底想定できない状況であり、我々の家計はますます厳しい状況になることが予想されます。
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