日本に未来はあるのか!?
人口減少と日本の家計の変化
平成の間に人口推移はどのように変化しているかについて見ていきたいと思います。
【図1-3-1】をご覧ください。総務省統計局の「人口の推移と将来の人口」によれば、平成2年(1990年)において、日本人の総人口は1億23,611千人となっていました。その後、平成22年(2010年)の1億28,057千人をピークに、徐々に減少しており、平成29年(2017年)には1億26,706千人となっています。さらには「令和2年(2020年)」の人口予想は1億25,325千人と逓減しています。この10年において人口が徐々に減少していることが見て取れます。
さらに総務省統計局のデータにおいて「令和37年(2055年)」には平成ピーク時の約3/4の97,411千人になり、「令和77年(2095年)」には平成ピーク時の半分以下である63,125千人まで減少することが予想されています。
【図1-3-1】
(出典:総務省データを加工 )
ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと共に世界3大投資家と称されるジム・ロジャーズは著書『お金の流れで読む日本と世界の未来』においてこのような日本の状況に対して、「日本は50年後に消滅するだろうという」と過激なことがと述べられています。また、「まず若者は日本から出ていくべきだ。国の借金が天井知らずに増え、人口が減少している。これは“ある外国人”が述べている意見ではない。簡単な算数だ。足し算と引き算ができればわかる。問題は悪化する一方だ。50年後に誰がこの借金を払うのか。私ではない。他の誰も払わないだろう。だから若者には解決策がない。日本を出ていくしかないだろう。」とも述べています。
日本が50年後に消滅がするとは日本国民の私としては考えたくはないですが、確かに人口が減少している現在の状況は憂慮すべき状況であるのは事実です。
人口の減少というのは、労働力の低下だけでなく国内消費も減少に繋がります。国内消費の低下は雇用創出の機会を減少させる原因となり、失業者の増加につながる可能性があります。日本は島国なのでだから、輸出により稼いではいいのかという声も聞こえてきそうですが、働く人材が減少すれば、生産力は落ちてきます。また、国内で需要が減少するのであれば、賃金の高い日本国内で生産するメリットがますます減少します。また、人口が増加している海外において需要があり、かつ働き手がいる海外に拠点を移すということ現状以上に促進されることも予想されます。結果として国内の雇用創出を逓減させる要因となります。
また、私たちの生活を支えている水道といったインフラは、税収により支えられていますが、労働力の減少により税収の減少が見込まれます。税収の割合は直近の財務省の統計では、この消費税と個人所得税で税収全体の60%前後占めており、税収の過半以上を国民からの税収により成り立っています。(なお、消費税については最終的に販売価格等を通じて国民が負担しているものと仮定)。
【図1-3-2】
(出典:財務省 所得・消費・資産等の税収構成比の推移)
しかし、日本の人口が減少するに従って税収の割合が変わらないと仮定した場合、単純に税収の減少に繋がるという事態に陥ることが想定されます。まして直近においては団塊世代の高齢化が進んでいくなか、生産年齢人口は総人口の減少以上に、減少することが想定されます。総務省の情報通信白書によれば、「国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によると、総人口は令和12年(2030年)には1億1,662万人、令和42年(2060年)には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は令和12年(2030年)には6,773万人、令和42年(2060年)には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込む。」と述べられています。
人口の減少よる日本の打撃は図りしれないものとなる可能性があります。
マクロな視点から「平成」から「令和」における変化を見てきました。それでは、私たちの生活は「平成」から「令和」にかけてどのように生活が変更してきたかについて確認していきたいと思います。
生活の変化は、人々の潜在的な意識にも変化与え、その結果、価値観の多様性を生んでいきました。このような価値観の多様性が「平成」から「令和」にかけてどのように家族形態に影響させていったかを確認していきたいと考えています。
【図1-3-3】は①単身世帯、②夫婦のみの世帯、③夫婦と未婚のみの世帯、④ひとり親と未婚の子のみの世帯、⑤三世代世帯、⑥その他の世帯と②夫婦のみの世帯、③夫婦と未婚のみの世帯、④ひとり親と未婚の子のみの世帯と合わせた⑦核家族世帯の構成割合表した図となります。
【図1-3-3】
(出典:厚生労働省)
平成元年(1989年)において①単身世帯の構成割合は全体の20.0%であったのが、平成28年(2016年)の①単身世帯の構成割合は26.9%と増加傾向にあります。これは、平成元年(1989年)当時において、③夫婦と子のみの世帯の多くの構成割合を占めていた団塊世代の子供が、独立していきその多くが①単身世帯を含む、③夫婦と子のみの世帯以外の世帯へと移り変わって行ったことが想定されます。
平成元年(1989年)において③夫婦と未婚の子のみの世帯は41.4%と全体の構成割合の過半近くを占めていたのが、平成28年(2016年)には29.5%と▲11.9ポイントも減少しています。一方、平成元年(1989年)の②夫婦のみの世帯の構成割合は14.4%であったのが、平成28年(2016年)の夫婦のみの世帯は23.7%と+9.3ポイント増加しています。平成という時の経過に経て、価値観の多様性が認められてきました。昭和の時代ではあれば、結婚をして子供を生むという生活が常識とされていましたが、平成という時代は、その旧来の考えが徐々に崩れていき、結婚をしないあるいはできない、結婚しても子供を持たない夫婦が増加したことに伴い、上記のような③夫婦と未婚の子のみの世帯の減少に繋がっているものと考えられます。また、それ以上に団塊世代が平成初期においては、③夫婦と未婚の子のみの世帯の子を構成していたいわゆる団塊ジュニアが、独立して①単独世帯又は②夫婦のみの世帯へと移り変わっていたことが想定されます。
また、単独世帯が夫婦と未婚の子のみの世帯に変わっていく率が年々減少していることが人口減少へとつながっていることは容易に推定されます。事実、厚生労働省が公表している。「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」において平成元年(1989年)における出生数は、1,246,802人であったのに対して、平成30年(2018年)における出生数は、918,397人と▲328,405人(▲26.3%)も減少しています。
この単身世代の増加はひとえに前述のインターネットの普及が影響しているものと考えています。平成初期の段階においては情報の多くは人の中にあり、その情報を共有するということは容易でなく、周りの助けを得なければ生活ができないあるいは生活するのが難しいというのが当時状況でした。すなわち、情報を入手するため人と人がコニュミケーションを実施しなければならないという環境でした。
しかし、このインターネットの普及し、生活の一部となったとき、さらにはスマートフォンが一般消費者の手に入ったときに急速に変化していったと感じています。例えば、徳川家康はどんな人だろうと調べたいと考えたとします。平成初期においてはインターネットというものは一般家庭普及されておらず、教科書を開いて調べるか、誰かに聞くか、あるいはより詳細に知りたければ図書館に行って徳川家康が書かれている本を探して、やっとその情報を得ることができるというのが通常でした。しかし、インターネットが普及し、情報の精度が高まってきている現在においては、Google等の検索エンジンにおいて検索を行えば、その情報の真偽は別としてなんらかの情報が労せず一瞬にして手に入れることが可能となりました。
また、インターネットは人とのつながりも変えていきました。平成初期においては、電話が通信手段の主流となっていましたが、携帯電話の普及に伴いメールが普及していき、その後スマートフォンの浸透に伴いtwitter、Instagram、Facebook等のSNSが急速に普及し、当事者の情報発信に他者が間接的に反応するといったコミュニケーションへと変化させていきました。また、SNSの普及は情報の入手速度をほぼリアルタイムと言っていいほどのスピードで入手することを可能にしました。実際、テレビで放送されるニュースにおいても、twitterの情報を速報でお伝えするまでに変化していきます。
このようにSNSも含め情報を容易に共有することを可能としたインターネットは、他人に依存することなく情報又はつながりを得ることを可能とし、単身で生きていくことをより容易したツールだと考えられます。
その反面、③夫婦と未婚の子のみの世帯は減少傾向にあります。上記のように単身で生きていくことが情報という面においては難しくなくなったこと、さらには結婚という行為そのものが、当たり前の価値観とされていた平成初期から、令和に近づくに連れて結婚という行為が多種多様な選択肢の1つとなったことによる影響があるのではないかと考えます。事実、【図2-1-2】及び【図2-1-3】をご覧ください。【図2-1-2】及び【図2-1-3】は内閣府が公表した男性、女性それぞれの「年齢別(5歳階級)別未婚率の推移」となります。これらの図は、男性、女性それぞれ25歳~29歳、30歳~34歳、35歳~39歳の年齢毎の未婚率の推移を表したものとなります。
〈年齢別(5歳階級)別未婚率の推移〉
【図1-3-4】
【図1-3-5】
(出典:国際社会保障・人口問題研究所)
「年齢別(5歳階級)別未婚率の推移」を見ると25歳~29歳、30歳~34歳、35歳~39歳の男性、女性の全ての年代において未婚率が10%以上上昇していることが見て取れます。2018年における25歳~39歳の人口が約2百万人であり、その10%以上である20万人以上の人が未婚になっているということが言えます。この20万人は、東京の荒川区の全人口と同じくらいの人数となり、かなりの人数がなんらかの理由により結婚という選択肢を選ばなくなったということが言えます。
令和の統計は本著書執筆時点において、各省庁等から発表されていないものの、上記のような傾向に大きな変化はないことが予想されます。
平成から令和にかけて、家族の形態に対する価値観の多様化並びにインターネットの普及による情報の入手の容易化に伴い、平成初期のほどの人と人の繋がりを不要とした社会変化に伴い、核家族世代は大きく減少し、単身世帯が増加しています。とはいえ、結局のところ人は一人で生きていくことは不可能です。インターネットというツールにより人の繋がり方は変化したとはいえ、変化しつつも何らかの形で人と人がつながりを持つということは変わりません。しかし、この家族形態の変化が人口の減少に繋がっていることを間違いありません。国家が人口減少に伴い税収等の減少により国家としての機能が低下していけば、我々の生活に影響が出ることは必須であることを考慮すると、この家族形態の変化をそのまま放置していく問題であり、我々も大きな問題として考えなければならないことだと思います。
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