お金の考え方

日本財政のヤバさと「年金は本当にもらえなくなるのか?」を徹底解説

将来、自分たちが老後を迎える頃に「年金は本当にもらえるのだろうか?」――これは、現役世代にとって最も不安な問いの一つではないでしょうか。

特に日本の財政状況が「危機的」と言われる中で、公的年金制度の持続可能性について様々な議論が飛び交っています。しかし、感情論ではなく、日本の財政の構造年金制度の仕組みを理解すれば、その不安の多くは解消されます。

本記事では、日本財政の現状を解説しつつ、「年金がもらえなくなる可能性」と、多くの専門家が指摘する「年金減額の現実」について、詳しく掘り下げます。


 

1.日本財政の現状:公的債務の巨大な壁

 

まず、日本の財政状況について確認しましょう。公的年金制度は、財政の健全性とは切り離して語れない部分があるからです。

 

(1) 巨額の財政赤字と国の借金

日本は、先進国の中でも群を抜いて公的債務(国の借金)が大きい国です。財務省の資料を見ても、社会保障費の増加や過去の景気対策により、国債発行残高は増え続けています。

  • 財政支出の増加要因:
    • 高齢化による社会保障費の膨張(医療、介護、年金など)
    • 過去の大規模な景気対策税収の低迷
    • 国債(借金)に頼る財政運営

財務省の資料が示すように、社会保障費の財源の多くを税金や借金に頼っており、この負担は将来世代に先送りされている状況です。

【データ出典元(参考情報)】

 

(2) 年金財政と国家財政は別会計

ここで重要なのは、「日本の財政赤字」と「公的年金の財源」が厳密には別会計であるということです。

日本の公的年金制度は、国民や企業が支払う保険料と、それに充当される国庫負担(税金)を主な財源とし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する積立金が支えています。

国の借金が多いからといって、年金が即座に破綻するわけではありません。年金財政は、政府が定期的に行う「財政検証」を通じて、長期的な持続可能性がチェックされています。


 

2.年金は「もらえなくなる」のか? 答えは「NO」

 

「年金が将来、全額もらえなくなる」という言説は、非常にセンセーショナルですが、公的年金制度の仕組みから見て、現実的には極めて可能性が低いと言えます。

 

(1) 賦課方式と国庫負担による裏付け

日本の公的年金は、原則として賦課方式で運営されています。これは、「その時の現役世代が納めた保険料で、その時の高齢世代の年金を賄う」という仕組みです。

  • 世代間の助け合いがベースにあるため、現役世代がゼロにならない限り、給付もゼロにはなりません。
  • 万が一、保険料や積立金で給付が賄えなくなっても、国が最終的な責任を持つ国庫負担(税金)があるため、「国が国民に対して年金を支払わない」という事態は、国の信用そのものの崩壊を意味します。

つまり、年金が完全にもらえなくなることは、日本という国家が破綻しない限り、ありえないと考えるのが妥当です。

 

(2) 積立金の枯渇≠年金制度の終了

「年金積立金(GPIFの運用資金)が2057年に枯渇する」といった報道がされることがありますが、これは積立金が尽きる時期を示唆するものであっても、年金制度そのものが終了するわけではありません

積立金が枯渇した後も、その時点の保険料収入と国庫負担によって年金の給付は続きます。積立金は、制度を円滑に運営し、世代間の公平を保つためのバッファー(準備金)としての役割を担っているのです。


 

3.回避できない「年金の減額(給付抑制)」という現実

年金がゼロにならない一方で、「実質的な年金額が減り続ける」という厳しい現実は避けられません。これが、少子高齢化が進む日本における公的年金制度の最大の特徴です。

 

(1) マクロ経済スライドによる給付抑制

 

公的年金の持続可能性を確保するため、2004年の制度改正で導入されたのが「マクロ経済スライド」です。

これは、年金の給付水準を、現役世代の減少平均余命の伸びに応じて自動的に調整(抑制)する仕組みです。

  • 仕組みの目的: 将来にわたって年金財政のバランスを取り、制度を維持すること。
  • 結果: 物価や賃金が上昇しても、その上昇分がすべて年金額に反映されるわけではなく、実質的な年金額は徐々に目減りしていきます。

厚生労働省の財政検証でも、このスライド調整により、老後の生活を支える所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金額の割合)を将来にわたって維持できるよう、給付抑制を続けることが前提とされています。

【データ出典元(参考情報)】

 

(2) 支給開始年齢の議論

減額とは別の形で給付水準を抑制する手段として、支給開始年齢の引き上げも議論の俎上にあります。

現在、原則65歳からの支給ですが、高齢者の就労意欲や健康寿命の延伸を考慮すると、将来的に70歳やそれ以降に受給開始年齢を引き上げる可能性は十分にあります。


 

まとめ:備えるべきは「ゼロ」ではなく「減額」

日本の公的年金は、日本国という国家が存在し続ける限り「ゼロ」になることはありません。これは制度の構造と国の信用が担保しているからです。

しかし、少子高齢化という避けられない構造的変化により、私たちが受け取る年金額は、「マクロ経済スライド」によって実質的に減額し続け、給付水準は抑制されていきます。

私たちが将来に備えるべきは、年金が「もらえない」という極端な事態ではなく、「公的年金だけでは生活水準を維持できなくなる」という現実です。

だからこそ、iDeCoやNISAといった私的年金制度を活用した自助努力が、ますます重要になってきています。公的年金を基盤としつつ、減額分を補えるよう、早めの資産形成を計画的に進めることが、現代を生きる私たちの最も確実な老後対策と言えるでしょう。

 

 



 

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