1-6.国内の税収と債務の状況

1-6.消費税減税はありえない!?国内の税収と債務の状況

消費減税は実施されることはあるのか?

私達の生活のなかで、誰しもが負担している税金である消費税は、果たして減税されることはあるのか・・・

景気が悪くなったり、生活に困窮したりニュースをみると必ず消費税減税を実施すればいいという議論が出てきます。

それでは、実際に消費税減税はあり得るのでしょうか。

結論としては、

国は消費税減税を99%実施しない!

 

なぜ、そういえるかについては消費税の歴史を少し見ていきましょう。

昭和63年12月(1988年12月)に竹下内閣のもと消費税法が成立し、翌平成元年4月(1989年4月)に消費税(3%)が導入されました。平成9年4月(1997年4月)に橋本内閣のもと消費税率は5%まで引き上げられました。その後平成26年4月(2014年4月)には安倍内閣のもと消費税率が8%となり、令和元年10月(2019年10月)には長期政権となった安倍内閣のもと消費税率が10%まで引き上げられました。

この消費税はいまや、国の税収にはかかせないものとなっています。【図1-7-1】をご覧ください。【図1-7-1】は一般会計税収の推移を表したものとなります。

【図1-7-1】

税収の推移

 

(出典:財務省「一般会計税収の推移」

消費税が導入された平成元年(1989年)における消費税の一般会計税収割合は3.3%であったのが、平成9年(1997年)に消費税5%に増税された翌年度の平成10年(1998年)の消費税の一般会計税収割合は、10.1%と倍以上に増加しています。さらに、平成26年(2014年)に消費税8%に増税された翌年度の平成27年(2015年)の消費税の一般会計税収割合は17.6%と法人所得の一般会計税収割合12.2%を大きく引き離し、所得税の一般会計税収割19.0%に近づくまでに増加しています。また、一般会計税収の推移を見ても、バブルの最中にあった1990年における60.1兆円であるのに対して、令和元年の税収は60.2兆円となっています。

また、国民の消費に対する課税はこの平成の間に大きく変化しています。【図1-7-2】をご覧ください。【図1-7-2】は税収を資産課税等、消費課税、法人所得課税、個人所得課税に分類したものとなります。(ここにおける消費課税とは消費税の他、酒税、たばこ税といった消費に関する税が含まれています。)

【図1-7-2】
税収の構成比

 

 

 

 

 

 

 

 

(出典:財務省「所得・消費・資産等の税収構成比の推移」)

このうち、消費課税は、昭和63年(1988年)時点では、17.7%であったのに対して、消費税が導入された平成2年(1989年)においては、18.6%と上昇しています。消費税が5%に引き上げられた平成9年以後の平成23年の統計では、消費課税は31.5%となり、税収の占める割合において最も高いものとなっています。その後、消費税が8%となった平成26年以降の平成30年の統計では、32.9%と税収における重要性は増していく一方になっています。消費税が10%に引き上げられる令和元年以降において税収の観点における消費税の存在は税収においてさらに重要性が増していくことが想像されます。このように収容な税収まで成長した消費税をゼロにするということは、1/3の税収を捨てることと同義となりますが、これを政府関係者が実行するとは到底想定されないことを勘案すると、消費税をゼロにするこどころか、減税さえ難しいと考えるの最も合理的であると考察します。

そして、消費税は最終消費者が課税される仕組みになっており、最終消費者である我々への影響はいかに大きなものかということがわかります。

次に、国が行っている借金の1つである公債残高はどのように推移しているか見ていきましょう。【図1-7-3】をご覧ください。【図1-7-3】は過去における国及び地方自治体の借金である公債残高の推移を示したものとなります。

【図1-7-3】
国債残高

 

 

 

 

 

 

 

 

(出典:財務省)
昭和40年(1965年)におい公債を発行して以降、国の借金は増加の一途をたどっています。日本は公債を継続的に発行しています。ここで注目して頂きたいのは、バブル崩壊前の平成元年で当初において、公債残高は161兆円でした。しかし、その後は増加する一方で、平成30年度末公債残高は約883兆円(見込み)となりました。日本借金である公債残高は増加することがあっても減少することはありませんでした。その結果、平成30年度現在において国民1人あたり約700万円の借金をしていると試算しています。1人あたり700万円と言われるとかなり高額な借金といえるかと思います。4人家族であれば、約2,798万円とさらに大きな金額となります。勤労者世帯の平均年間可処分所得が約514万であることと比較しても、この金額がいかに大きな金額となっているかについては、お分かりいただけるかと思います。1人あたり約700万円という金額を急に国から払ってくださいと言われたとしても即金で支払える人は少数ではないでしょうか。ましてや、自分が直接した借金でもないものを払ってくださいと言われても、応じる気になれない人がほとんどではないでしょうか。

なお、仮に国または地方自治体が破綻としたとしても、単純に借金額をそのまま国民が返済することになりません。国及び地方自治体は後述の通り、換金可能な債権等の資産も持っていることから、まずはその資産を処分した後に、資産換金後の金額でも不足額が本来的な国民1人あたりの純粋な借金となります。

とはいえ、公債は国及び地方自治体の借金であることから、利子と元本の返還が必要となります。借金してから返還するまでの期限、すなわち償還期限があります。償還期限は公債の種類にもよりますが、2年~40年となっています。償還期限が来たものに対して、国はまた借金をすることになるため、借金は減っていません。これを一般家庭で言えば銀行に借金をしたうえで、借金を返すお金がないために別の銀行に借金をして一時しのぎをしているという異常な状態です。日本の公債を減少させるためには、国の収入である歳入が国の支出である歳出を超える必要がありますが、現状その目途はたっていません。歳入が歳出を超えないのであれば、本来的には歳出を減少させることをしなければならないということは小学生でもわかるようなことなのですが、国は景気対策を理由に歳出を減らす努力をしていないという現状です。

 

続いて【図1-7-4】をご覧ください。【図1-7-4】はGDP(国内総生産)に対する債務残高の国際比較となります。

 

【図1-7-4】
債務残高の国際比較

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(出典:財務省)

日本の状況は主要先進国の中でも大きく悪化していることがわかります。【図1-7-3】で説明したように公債残高は毎年増加している状況にあり、それに対するGDPの成長はわずかであることから、日本は他の先進諸国と比較して高い水準の債務残高となっています。

それでは、日本はすぐに破綻するかというとそういうわけではありません。

日本の場合、公債以上に金融資産を持っているからです。令和元年8月末における公債残高は936兆円となっていますが、貸付金等の金融資産は1,176兆円と公債残高を上回っています。とはいえ、現状の公債発行量を続ければいずれ金融資産の額を超えることとなるため、歳出の見直しは急務であることは変わりありません。

近い未来に発生する生じる団塊世代の75歳超えによる医療費増加を想定した場合、単純に必要額を公債でまかなおうとすれば、借金の金額はさらに増加することになります。そのために、今の政府の方々には、歳出の優先事項を決めたうえで歳入の範囲内で歳出額を抑える努力をお願いしたいところです。もちろん、今まで歳出として予算を取れていた自治体等が予算を取れなくなるという事態も発生することは予想されますが、ぜひとも国民全体で乗り超えていきたいと考えています。前年やっていたからという安易な理由で予算を決めてほしくないものです。

 

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