何が変わった? 平成の7つの変化 1-1.景気と家計の変化

1-1.直視したくない真実!景気推移と平均給与

1-1.直視したくない真実!景気推移と平均給与
まずは景気推移と平均給与を見ていこうかの。

 

平成は30年以上続いたけど、どんな生活を送っていたのかな?

 

そうじゃの、そのあたりを景気の指標である株価推移を見ながら説明していくことにしよう。

 

平成が始まった平成元年(1989年)当初はバブル経済の最中にありました。平成初期のバブル経済時において日本の経済成長は凄まじいもので、その勢いそのままに日本は当時におけるアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国まで成長をし、アメリカを追いつけ追い越せの勢いがありました。もちろん当時の日本人たちは経済は成長していくことを信じて疑いませんでした。ましてやその当時において、後にバブル崩壊と呼ばれる日本近代史のなかでもっとも大きなインパクトを残した経済打撃が起こるとは想像もしません。事実、昭和から平成初期にかけて日本経済は急激な右肩上がりの成長を続けていました。

平成元年(1989年)当時のバブル最中においては、普通のサリーマンでも平均月50万円ほどで、初任給も30万円を超えていました。「令和」となった現代においては、弁護士や医者あるいは高いプログラミングスキルを持った人等、特定のスキル持った人や産業を除きなかなか考えられない水準かと思います。また、バブル最中においては部長クラスになると平均月給で90万円以上の収入があったとも言われています。平均90万となると、90万を超える給与がもらっている人も多数いたことが想像されます。現代においてはうらやましい限りです。

さらにバブル期においては、就活状況は売り手市場にあり、就活生は引く手あまたの状況でした。就活生は内定取得後、他の企業への乗り換えを防ぐため内定を出した企業は企業負担で海外旅行に連れていく等の施策がとられる等、「令和」の時代においては信じられないような環境がありました。

しかし、その環境は長く続くことはありませんでした。バブルが崩壊したのです。下記図1-1-1をご覧ください。下記は日経平均株価の平成における株価推移です。

【図1-1-1】

 

バブルが崩壊し日本経済は下降の一途をたどりました。日経平均が平成元年(1989年)12月に3万8,957円を記録した後のバブル崩壊後の平成2年(1990年)9月30日の日経平均株価は日経平均株価2万222円と1年足らずで日経平均株価1万8,735円も下落しました。「令和」の初値である令和元年(2019年)5月7日の日経平均株価の終値が2万1,923円であり、下落額が令和の初値における85%をも占めていること考えるとその下落幅に対するインパクトの大きさがわかります。
私も当時、ニュースで連日株価が大きく下がったという報道していたことを覚えています。バブルが崩壊したことが、どのように私たちの生活に影響するかまでは、その当時理解していませんでしたが…。

バブル崩壊後、日本は単に低迷し続けたわけではありせん。日本においてもいくつかの好景気がありました。まず、平成7年(1995年)11月にWindows95が日本で発売された前後に急速にIT化が進んだことに伴いIT投資が進み、平成12年(2000年)4月には日経平均株価2万516円が上昇しました。いわゆるITバブルです。しかし、そのITバブルも長くは続くことはありませんでした。ITバブル崩壊後の日経平均株価は平成13年(2001年)9月にはついに1万円台を割り込み、平成15年(2003年)4月には7,607円まで下落しました。

その後、日銀によるゼロ金利政策などの金融緩和政策の効果もあり、いざなみ景気と呼ばれる好景気を迎え、緩やかに景気は回復、平成19年(2007年)6月には1万8,240円まで上昇しました。このまま、景気は回復するのかという期待の最中において、平成20年(2008年)9月にその当時米国第4位の規模を持つ巨大証券会社・名門投資銀行のひとつであるリーマンブラザーズーが破綻したことにきっかけに起きたリーマンショックの影響により世界規模での株価下落が生じました。日本においても例外なくその影響を受け長い不景気が続き平成21年(2009年)2月には日経平均株価7,268円まで下落しました。リーマンショックを発端に、日本においても長期間の不景気は続き、その中で平成23年(2011年)3月東日本大震災があり、人々の心に大きな傷を残しました。

平成24年(2012年)11月の衆議院解散後の選挙の結果、安倍政権成立しました。安倍政権は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間融資を喚起する成長戦略」という3本の矢という政略を掲げました。当時安倍政権の政策をアベノミクスと呼ばれていました。アベノミクスの効果により、好景気は続き平成30年(2018年)10月には日経平均株価が2万4,270円まで上がりました。このアベノミクスによる好景気はバブル経済以来の好景気と言われています。この好景気は私たち国民にとっては、給料への見返りがそれほどなかったことから実感を得にくいものの、戦後最長の好景気と言われています。その当時における就職状況を見てみると就活生についてはバブル以来の売り手市場と呼ばれており、各社は優秀な人材を確保しようと躍起になっていました。しかし、そのアベノミクスも激しい米中摩擦のあおりを受け、さらにはアベノミクスで掲げていた「大胆な金融政策」の具体策である金融緩和に限界が見え、日本景気について陰りが出てきました。さらには「令和2年(2020年)」に大流行した新型コロナウィルスにより、経済においても大きな打撃を受けました。

「平成」と「令和」の始まりを見た時に、株価下落の原因は異なるもののいずれも和暦2年目において大きな株価下落が生じたという点については、共通していることが見て取れます。

 

やっぱりバブル崩壊は日本に大きなダメージを与えたんだね。

 

そうじゃの。バブル崩壊後のこの期間を失われた20年とか、30年とか言われたりもするの。

 

これだけ、景気が悪くなってたらお給料とかもバブル当時と比べたら下がっているだろうね。

 

どうかな?それでは、多く人にとって生活の源泉となるお給料という観点から見ていってみようかの。

 

上記のような景気の変化に対して、我々の家計はどのように変化していったのでしょうか。多くの人にとって、家計における収入の源泉である給与について見て行きましょう。
【図1-1-2】をご覧ください。【1-1-2】は国税庁が公表している「民間給与実態統計調査」に基づいた平均給与の推移に係るグラフとなります。

【図1-1-2】

(出典:国税庁 「民間給与実態統計調査」を加工)

平成元年においては、402万円だった平均給与が、平成9年には467万円まで上昇し、低下した後に、平成29年には432万円で推移しています。この推移はご覧になられた方の中には「そんなに給与をもらっていないよ」という方や、「平均くらいの給与はあるかな」という方、「もう少しもらっているかな」と思った方等、様々な思いがあるかと思います。ただし、国税庁が公表した平均給与の推移はあくまでも平均であり、一部の高所得者が平均を引き上げてしまっているため、給与の少ない順から並べた真中にあたる中央値を考えた場合、もっと低い金額になることが予想されます。
厚生労働省発表の「賃金階級、性、年齢階級別労働者割合」によれば、平成30年における男性の給与(賃金)の中央値は295.7万円、女性の給与(賃金)の中央値は226.1万となっています。平成30年の平均給与が440万円であることを勘案すると、男性、女性と共に、100万円以上の差異あり、この平均値と中央値の差が近年社会問題となっている格差と言えるかと思います。ただし、女性の社会進出が進んだことや、働きの多様化も同時に進められているため、上記の中央値と平均値との差が一概に格差と言えるわけではないということに留意が必要となります。

様々な意見があるにせよ、この平均給与の推移をみると平成元年(1989年)から平成29年(2017年)にかけて平均で、30万円程度増加しています。国民全体としては、給与が上がることは望ましいことですし、給与の増加が生活を豊かにするのであれば、すばらしいことかと思います。しかし、仮に給与が上がっても生活が楽になったという実感をもっている方それほど多くないのでは考えています。ここには、平均給与という言葉のからくりがあります。平均給与は年収と呼ばれる、あくまでも額面の話です。すなわち、給与明細に記載されている総支給額と呼ばれるもので、所得税、住民税、社会保険料、厚生年金の金額といった各種控除額が引かれる前の金額であることから、実際の手取りは当然に平均給与より小さくなることなります。私たちは、この手取りに基づいて生活の行っています。皆様の中には、昇進等をしたけど一向に生活が楽にならないと感じている方もいるのではないしょうか。この手取りについても、平成初期と令和を比較した場合、各種控除額の控除割合が大きくなっていることにより、仮に給与が昇進等により増加したとしても、増加に応じた各種控除額が増加するために、実感を得にくい社会になっているという状況です。

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