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札幌ドームの2025年3月期の最終決算が黒字!今後も大丈夫?

札幌ドームと日本ハムファイターズの契約は、2023年シーズンで終了しています。その後、日本ハムは北広島市に新しく建設された「エスコンフィールドHOKKAIDO」を本拠地として使用し始めました。一方、札幌ドームはというと、日本ハムファイターズの契約が終了した翌年度の2024年3月期の決算では、当期純利益▲6億5千1百万円の大きな赤字を出したものの、その後2025年3月期の決算では、当期純利益4千2百万円の黒字を転換しました。札幌ドームは札幌にとっても重要な施設になるかと思いますが、来期以降も本当に大丈夫なのでしょうか。

2025年3月期の決算書(計算書類)を紐解いていきたいと思います。

 

過去3期間の推移

以下は、札幌ドーム(ダイワプレミアムドーム)の2023年3月期から2025年3月期までの3期間推移となります。

【2023年3月期】

札幌ドームが日本ハムファイターズとの契約は、2023年3月に終了していますが、2023年3月期においては、2022年4月~2023年3月までの契約期間に伴う収入があったため、解除による影響はあまり出ていなかったことにより、税引前当期純利益が1億9千万円となっています。

 

【2024年3月期】
日本ハムファイターズがエスコンフィールドHOKKAIDOに移転した影響で、札幌ドームの利用者数が激減しています。売上高が約12億7千万円と過去最低となりました。この結果、6億5千万円の赤字を計上しています。イベント数の増加や新モードの設置にもかかわらず、赤字額が続きました。これは日本ハムの移転による主力収益源の消失が大きな要因となっています。
なお、ネーミングライツ(命名権)を利用した収益拡大の取り組みがスタートしています。

【2025年3月期】
大幅な改善が見られ、当期純利益42百万円の黒字を達成しています。収益改善の背景には、イベント利用日数の増加や命名権収入、コスト削減が成功したこと等が挙げられます。また、特に広告収入や多様なイベント開催がプラス要因に寄与しています。

 

営業利益で考える

2025年3月期の決算を見ると当期純損益ベースでは、プラスに転じているものの、営業利益ベースでは、マイナスとなっています。営業損益は、本業の儲けを表す損益と言われていることから、この営業利益がマイナスとなっていることから、決して良い状態ではないということが伺えます。

この営業利益がプラスにならないと中長期視点で、会社の財政状態が悪化する可能性があり、最終的には、札幌市や国が補助金等で補填するといった事態が起こりかねないという点で、決して安心できる状況とは言えないと考えられます。では、なぜ、営業利益が悪化したのでしょうか?

以下で、各段階損益に係る利益率の推移を見ていくことにしましょう。

 

各段階損益に係る利益率の推移

続いて各段階損益(売上総利益、営業利益、経常利益、税引後当期純利益)に係る利益率を見ていきましょう。

ここでの注目すべきは、売上総利益率です。2023年3月期が18.3%であったのに対して、2024年3月期及び2025年3月期15%台へと下落していることです。売上総利益率は、以下の通りに計算されます。

売上総利益=売上高ー売上原価

売上総利益率=売上総利益÷売上高

売上総利益率が低下する要因としては、売上高に対する売上原価が増加しているか、あるいは売上原価が変わらないが、売上高が下がることにより発生します。

この点、2023年3月期と2024年3月期及び2025年3月期の違いとして、日本ハムファイターズとの契約の有無があげられますが、日本ハムファイターズとの契約より契約条件が悪い(利益率が悪い)状況が続いていることが考えられます。

まとめ

2025年3月期の決算では、当期純損益がプラスに転じた一方、営業利益がマイナスという状況です。営業利益は本業の儲けを示す指標であり、これがマイナスであることは、会社の財政状況が中長期的に悪化するリスクがあります。最悪の場合、札幌市や国の補助金が必要になる可能性も示唆されており、現状は楽観視できない状況であることがわかります。

また、2025年3月期に限ったことではないのですが、各年度において株主である札幌市との取引もそれなりのボリュームを占めていることから、この点も考慮してみていく必要あります。

 

本当の業績回復を達成できまるで札幌ドーム(ダイワプレミアムドーム)に今後も注目が必要です。

 

 

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